康人間関係健環言表吉 境 葉 現ラーニングボードマテリアルゲームコラムきっかわとしこ川 肇子先生 慶應義塾大学商学部教授主な著書:『ゲームと対話で学ぼう: Thiagiメソッド』(共著、ナカニシヤ出版)『リスク・コミュニケーション・トレーニング ゲーミングによる体験型研修のススメ』(編書、ナカニシヤ出版)など近年、教育の現場でもボードゲームの活用が進んでいます。ゼミでの研究授業の一環として、さまざまなボードゲームを実際に取り入れている、慶應義塾大学商学部の吉川肇子教授(組織心理学)にお話を伺いました。社会心理学的な視点から見ると、ボードゲームで遊ぶことは、対人的な能力が向上したり、社会システムへの理解が深まったりするというように、いくつかよい点があります。ここでは、前者について、特に「他者」についての推測をする」ことに注目して解説します。他者の考えや知識を推測することが、勝つことの鍵になっているゲームは少なくありません。協力のゲームならばなおのこと、他者と考えを共有しなくてはなりません。この「推測」は、コミュニケーションを適切に行なっていく上で基礎となるものです。たとえば、小さい子どもが嘘をつけない(あるいは、嘘であることが明らかな嘘をつく)のは、聞き手が何を知っているかを、正しく推測できないから起こることです。言い換えれば、相手をだますためには、相手が何を知っているかについての推測が正しくできていることが重要なのです。このことは、通常のコミュニケーションについても言えることで、お互いに意味あることを伝え合うためには、聞き手が何を知っているのか、何を考えているのかを適切に推測できなければ、話す内容を調整することはできません。しかし、他者のことを推測するという能力を向上させることは、それほど簡単ではありません。皆さんの身の回りを見ても、他者の気持ちがわかるという人は、多くはないでしょう。しかし、ボードゲームではそれを自然な形で実現しています。ゲームで遊んでいるとき、他の人のプレイを見て、この人は何をしたくてそうしているのか、自分が次にこうしたら、他の人はどうするだろうか、常に考えることになります。プレイヤーは、誰に強制されるのでもなく、自然にそれを行なっているのです。そして楽しい。遊びが学びに直結している、ボードゲームを遊んでみてください。https://www.wansaca.com/64専門家に聞くボードゲームの効用
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