スクラボ7_特別支援版
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行為的表象段階象徴的表象段階映像的表象段階アメリカの心理学者ブルーナーは、発達初期の認知発達について、「行為的表象段階」「映像的表象段階」「象徴的表象段階」に分け、それぞれ、行為(触ることや動かすこと)を通して学ぶ段階、視覚を通して学ぶ段階、象徴(シンボル)すなわち、「今ここ」にはない事物や事柄を代替する言葉とイメージ(表象)を使って「考える」段階と捉えています。特集1では、これらを、「触覚と運動が優先する段階」「視覚が優先する段階」「触覚-運動と視知覚、聴知覚が統合する」と表現しています。人間の発達は、なだらかな変化ではなく、質を変えながら段階的に変化していくので、「段階」という言葉が使われているのです。●学習活動を支える大人のまなざし触覚や運動と他の感覚が統合され、言葉を使って複雑な思考ができるようになるまでには、子どもは全身の感覚を活発に使いながら、動きを通して言葉の土台となる表象を育てています。各々の段階で子どもが何に喜びを感じているかといえば、行為的表象段階では、触れること、なめること、動かして落とすこと、手や指を穴に差し入れること、物をさすこと、はめることなど、触覚や運動に訴える活動です。映像的表象段階では、位置の同一性を保つこと(いつもの場所にいつもの人や物)、同じ物を打ち合わせることや揃えること、並べること、積むことなど、視覚的な秩序(同じ)に喜びを感じ、次第に色や形の仲間集めや、大きさや長さの比較・分類をしながら、概念を体得していきます。これらは遊びの中で自発的に表現される「概念行動」と呼ばれ、大人に言われてやっているわけではありません。逆に、各段階の行動特徴に気づいた大人が、その段階の興味関心をうまく捉えて適切な物(教材)を提供し、遊びや活動が発展するように環境を整えていくと、子どもは自分の活動の価値を認めてくれる大人に対して関心と信頼を寄せ、その人といるだけで嬉しそうな顔をするようになります。行為を通して学ぶ段階言葉とイメージを使って考える段階視覚を優先して学ぶ段階●ブルーナーの3段階「認知」というと、学校の先生方は「できることやわかること」といった印象をもち、温かいイメージのある「こころ」とは別と考える方もいるかもしれません。しかし、人の精神世界は、感覚・知覚・認知を通して豊かになるとともに、好き嫌いや喜怒哀楽もそれらと強く関連して変化していきます。そのため、心理学では、「認知」はこころの機能、「認知発達」はその質的変化と捉えるのが一般的です。認知発達をよく理解していれば子どもが喜んで応じる課題を用意することもでき、子どものこころの世界と認知発達とは一体であると考えられます。40特 集 2認知発達に沿った教材提供の進め方 PART Ⅱ知的な遅れを伴う各段階の興味・関心を捉らえる自閉スペクトラム症自閉スペクトラム症(ASD)がある子の場合1

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