スクラボ7_特別支援版
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2発達の不均衡さへの配慮図 1障害のない4歳児の描画を見ると、20%くらいのお子さんに、注目した部分の位置が逆転したり向きが反転したりする現象が見られます。その後しばしば鏡文字を書きますが(図1)、就学までには通常の向きになることが多いので、大人はあまり気にしないようです。しかし、「落ち着きのない子」「学習に困難のある子」といわれるお子さんにおいては、年齢が高くなっても、言葉の力が年齢相応に達していても、そのような視覚認知の弱さを残していることがあります。イライラしやすかったり、感情を爆発させるといった行動の背景には、見てもよくわからない、自分が思った通りに物を扱えないなどのフラストレーションがあるのかもしれません。大人が気にするのはそうした粗大な行動面であることが多いのですが、認知面ではしばしば次のような特徴が見られます。こうしたお子さんたちに、書字など苦手な作業を迫ると、いきなりノートを投げたりして収拾がつかなくなることがあります。実際、「やればできるのに」と思われることもあるのですが、苦手なところには触れられたくないという人としてのプライドなのでしょう。そんなお子さんに限って、人がいなくなるとこっそり漢字の練習をしていたりします。そのような場合には、真正面からプリント学習を迫るよりは、粗大な運動の中で目を使って体の動きを調節する学習の方を選択します。障害物を避ける、くぐるために体を屈めるなどを通して、十分視覚の発達を促すことができるからです。5歳後半の絵と鏡文字●動きの中で空間関係を学ぶ発達には順序性がある一方で、障害のあるお子さんは年齢や発達が進むほど発達の不均衡さが目立ってくることが多く、支援者側が得意な部分のみに注目すると実態を見誤ってしまいます。通級指導教室に通う「特別な教育ニーズ」のあるお子さんや、LD、ADHD、高機能自閉スペクトラム症が背景にあるお子さんでは、どこか、驚くほど幼い部分を残していることがあります。読み書きができるのに、物の位置、方向、順序の判断を伴う指示、たとえば、「〇〇を△△の向こう側において」「机をもとの位置に戻して」に対して、どうしていいかわからなくなってしまうなどです。位置、方向、順序の認知は全ての生活動作の基礎にあるため、これらの把握に困難がある場合、遊びにも学習にも苦労している様子が見受けられます。しかし、苦手な部分に注目しすぎると、敏感に察して課題を避けることもあるため、苦手なことを了解しながら遊びの中で学べるようにする工夫が必要です。粗大運動や操作を伴う視覚系の教材は、遊びを通じて目の使い方が上手になり、環境にある物の順序性や位置関係への気づきが高まるよさがあります。物と自分との関係のなかで動きの調節に自信がつくと、情緒も落ち着いてきます。1 描かれた線の空いているところをつなげようとするとどうしても隙間が空いてしまう(図2)。2 丸い形を描こうとするのだが歪んでしまう(図2)。3 尖ったところや目立つところに注目すると途中を忘れてしまう(図3上)。4 交差する線を描けない(図3下)。5 漢字の一部が反転したり欠けてしまったりする。6 平均台の足を置く面を見ながらゆっくり渡ることが難しい。38①粗大運動を通じて

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