スクラボ7_特別支援版
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自分と外界の区別これお外で見たよイラスト1ポイントの1つは、優先的に使っている感覚は何かということです。人間は、最初から諸感覚をバランスよく使うわけではなく、各段階で優先的に使う感覚があり、嗅覚や味覚、触覚などの近位感覚から、触覚と運動の統合→触・運動感覚と視知覚(見てわかる力)の統合→触・運動感覚と視知覚・聴知覚(聞いてわかる力)の統合といった順序で質を変え、それとともに、子どもの興味もより広い空間に向かってひらかれていきます(下表)。つまり、「認知」は、環境とのかかわりの中で主体的に身につけていく、各感覚の統合のプロセスということもできます。コミュニケーションの意欲も、行動や感情をコントロールする能力も、諸感覚を通して外界に関心が広がる過程で育っていきます。生後3か月頃、自分自身への感覚刺激から外に向かって興味の方向が転じると、自己と外界の区別をするようになり、それに伴い自己と他者の区別がついてくると、発信の意欲が芽生えます。言葉で発信する前には、大人の手を引く、指さしをするなどの伝達行為が生じ(イラスト1)、指さしで人の注意を引くようになるとまもなく、定型発達では言葉が表出されます。感覚運動期(物とのかかわり、感覚運動を通した学び)触覚と運動が優先 動きを通した学び 物とのかかわりを通して他者への関心や伝達欲求が生じる各段階で優先的に使う感覚に合わせて教材を選択すると、子どもの「やってみたい」気持ちや活動の結果を人と共有したいという気持ちを高めることができます。そこでは、物(教材)が子どもを誘い、物とかかわり、試して発見する喜びを、そばで見守る大人と共有するという3項関係が成立しています。物に名前があることに気づいた子どもは、その後急速に物の名前や動作語を獲得し、言葉で考え、言葉で気持ちや行動を調節するための土台を作ります。3歳頃には、たとえば「がまん」という言葉で気持ちをコントロールするようになりますが、これも、「がまん」を理解する概念の力が育ってこそです。「がまん」の指示が通じるようになる時期は、触・運動感覚と視知覚が急速に統合され調整される、たとえば「閉じた丸が描ける」時期とも重なり合っています。このようにして、認知と言語、対人関係、情緒、そして運動は密接に関係しながら育っていきます。伝達欲求が強くなる触覚・運動と視覚の統合 指さしや身振りで語る→言葉の表出 落とす、叩く、ひっぱるなど縦方向の動きを好む 結果が出るとチラリと人の顔を見る・身振りを使いながら言葉を覚える・大人の言葉をオウム返ししつつ 言葉の使用場面やタイミングを学ぶ・大人の手を借りながら同年齢の 子どもと交流する視覚が優先的に使われるようになる 同じ物を積む同じ物を並べる→線分への関心から形の理解へ型はめやマッチング教材を好む(触覚を使いながら形に気づいていく)絵カードが通じるようになる⇒イメージの拡大・概念の芽生えへ友達と同じことをしようとする集団の決まりを守ろうとする ⇒「キノウ」「アシタ」など目の前にない世界を意識した言葉が出てくる触覚-運動と視覚と言葉が結びつく 「目標」や「終わり」を自分で決めながら活動する視覚で手順を予測する ○×など記号の意味がわかる 見た目の異なるものを言葉の基準でマッチング・分類する(シンボルや絵と実物をマッチングする、「お風呂で使うもの」「公園にあるもの」など具体的な経験を基準に発展する)視覚優先の認知運動(指さし)で語る言葉の基礎にある各感覚の統合の過程と対人意識の質的変化発達の方向34ポイント1-1 感覚の使い方に合わせる

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