スクラボ7_特別支援版
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ある事象に対してイメージをもつためには、「見たり聞いたり触ったり」する経験が必要です。言葉や記号から何かがイメージできると、人は安心しますね。逆に、経験がない、あるいは予測が困難なことに対しては、「不安」を感じ「警戒感」をもちます。たとえば、観光地などで♨のマークを見たとき、日本人なら「わかる」のですが、外国人は、「なんだろう、入っても大丈夫かな」と不安になるかもしれません。同様に、経験の少ない年少の、あるいはイメージする機能そのものに困難さのある知的障害や自閉スペクトラム症を伴う子どもは、しばしば新しいできごとや環境の変化に対し、緊張して身構えたり、座り込んだりします。こだわりが強くなるのも、「これだったら安心」ということなのでしょう。このように、「認知」と「情緒・行動」との間には密接な関係があるといえます。●教材の役割「認知」の背景には「経験」があることから、以前の教育観ではたくさんの経験をさせることがよいと考えられていました。しかし、そもそも認知に困難のある子どもは経験からうまく学ぶことができません。社会的環境は複雑で変化に富み、そこから本人が「わかった!」と思えるような法則性を見出すのは簡単ではありません。様々な経験の中で個性を身につけていく子どもたちですが、期待や予測が裏切られるばかりですと、新しい経験にも喜びがもてなくなってしまいます。つまり、学習には、経験の量ではなく「わかる経験」が必要といえます。それを可能にするのが教材・教具(本稿では略して「教材」)です。特に特別支援教育において教材は、子どもと環境とのやりとりを促進し、人と「わかる」体験を分かち合う、コミュニケーションの媒体としての役割を果たしています。あれか!32特 集 1認知発達に沿った教材提供の進め方 PART Ⅰなぜ認知発達が大事か●認知と情緒・行動との密接な関係「認知」とは、物やできごとを見たり聞いたり触ったりして「わかる」ことだといわれます。では、「わかる」とは何でしょうか? 便利な言葉ですが、説明しようとすると難しいですね。見たり聞いたり触ったりしたときの、「あれか!」という感覚・・・筆者は、「イメージできること」「違いが区別できること」と考えることにしています。認知発達に沿った教材提供の進め方

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