インクルム02
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3ゼロからわかる 合理的配慮特集 2くためのスペース確保やそのための仕切り板を準備することなども該当するでしょう。うか。自作しようと考えたもののうまくいかずに断念した経験がある方もいらっしゃるでしょう。合理的配慮を提供する際には、座席位置を変えたり、個別に指示内容をメモで渡したりするなど、授業場面や生活場面などで教員が特に準備をすることなく実施できることがあります。その一方で、その子専用にプリントを作成する、黒板をデジカメで撮影する、ノート代わりにパソコンでノートを取るなど、事前準備を必要とする場合があります。その際、学校に貸与できるデジカメやパソコンがある、ということを基礎的環境がある(もしくは、基礎的環境が整備されている状況)、という表現ができます。つまり、合理的配慮が決定してから準備するのではなく、そのような合理的配慮があり得るので事前に準備をしておくこと、もしくは合理的配慮を提供せずに済む事前の環境整備などを指します。他にも例を挙げると、教材・教具、障害のある子どもなどが使いやすいはさみや、鉛筆を持ちやすくするアタッチメントなどの治具を事前に準備しておくこと、肢体不自由の人向けにエレベーターやスロープを設置すること、視覚障害者の人のための点字ブロックや必要な箇所に点字を貼っておくこと、イライラするなどしたときに落ち着では、子どもに合った教材・教具等は、どのようにすれば手に入るのでしょうか。読者のみなさんの中には、子どもに合わせて教材・教具などを自作された経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょその際に、教材・教具などのカタログや文房具屋さんなどで、「これは使えそう」と感じて購入した方がいらっしゃるかもしれません。私の経験からは、他の先生が作られた自作教材が少しの工夫で私が担当する子どもに活用できる場合もありましたし、その自作教材のコンセプト(障害の特性やその子どもの特徴に対して、何を目的に、どの部分の困難を軽減しようとしているのか)がヒントになったりすることもありました。また、全国各地の教育委員会や学校に訪問させていただくと、教員の専門性向上のひとつの方法として、市販されていたり自作したりした教材・教具などを集めた部屋が設置されていたり、ネットに教材・教具などを掲載したりするなどして、より多くの先生方に共有している事例を見聞きすることがありました。合理的配慮提供のプロセス(47ページ図参照)を踏まえて、担当する子どもに合わせて教材を作成すること自体は合理的配慮提供にあたりますが、その作成された教材が常にあり誰でも使えるという状態は、基礎的環境が整備されていると表現することができます。これらの考え方からわかるように、教材・教具などを学校に準備しておくことが、学びに困っている子どもが困る前に手を打ったり、困ったときに即座に対応したりするために必要だとご理解いただけるのではないでしょうか。例えば、ペンシルグリップを考えてください。既存の鉛筆の太さではうまく持てない、筆圧が弱くてうまく字が書けないなどの際に、子どもに合ったペンシルグリップを使うことで書きやすくなる子どもがいます。その際に、学校にいくつかの種類のペンシルグリップを準備しておくことが、即座にその子どもの困っている状況を改善することができる可能性があります。また、いくつかのペンシルグリップを試してみることで、どれが合っているのかを判断することができるかもしれません。ただ、ここで留意が必要なことは、書きやすくなったからといって、本当にその子どもに「必要かつ適当な変更・調整」になっているかどうかをしっかりと検討することです。(1)基礎的環境の整備と教材・教具等(2)自作教材を一般教材化することの意義とその取組の重要性724-148グリップセレクションBOXp.421掲載743-949ジッパーテーションカームダウンp.221掲載49合理的配慮提供を支える基礎的環境の重要性

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