webカタログ ▶ www.sanwa303.co.jp/catalog/ゼロからわかる 合理的配慮特集 2私の合理的配慮に関する相談等の経験から、プロセスの重要なポイントを6つ挙げることができます。1つめのポイントは「意思の表明」です。意思の表明は、本人・保護者が困っていることや合理的配慮が必要であることを学校の設置者や学校に伝えることを指します。ただ、学校が本人の困っている状態に気付き、本人・保護者に確認を取った場合も含まれます。その際、対応指針においては、相手が明らかに困っている状況だった場合に働きかけることや相談の窓口の明確化、意思の表明をしやすい環境づくりなどが求められています。2つめは「合意形成に向けた建設的対話の実施」です。意思の表明によって、合理的配慮の必要性やその具体等が示された際、その通りに実施される場合もあれば、実施内容や方法について調整が必要な場合もあります。そこで、必要な対応を決めるために、本人・保護者と学校(設置者を含む場合もあります)がともに解決策を検討するために話し合いを実施する場合があります。これを建設的対話と言いますが、すぐに合意形成できた場合でも、この建設的対話を行うことはとても重要です。なぜなら、この建設的対話が行われることによって、本人に学習上及び生活上にどのような困難があり、その困難がどのような障害の特性から引き起こされているのかを、本人・保護者と学校が共通理解することができるからです。また、この経験は、本人が今後の学校生活や学校を卒業したあとに、自ら意思を表明する力を付けるためにも重要な取組だと考えています。3つめは、合理的配慮を提供したあとに、その合理的配慮が必要かつ適当な状態になっているかをモニターするための「PDCAサイクルを適切に回すこと」です。例えば、小学校1年生で提供を決めた合理的配慮は、障害の状態が変化したり、子ども自身が成長したり、周囲の環境が変化したりするので、そのままずっと同じ合理的配慮を続けることがよいとは限りません。そのため、月毎や学期毎など定期的に見直していく必要があります。例えば、合理的配慮提供を開始した当初は見直しの検討を短期間のうちに実施する、ということも考えられます。また、本人・保護者からの急な変更依頼による場合も想定しておく必要があるでしょう。4つめは、「合理的配慮の内容を書いて残すこと」です。合意形成した合理的配慮をお互いの頭の中だけで記憶しておくことには無理があるでしょう。合意形成された内容を本人・保護者と学校等が共通理解するために、しっかりと文章に残しておく必要があります。対応指針では「個別の教育支援計画」が例示されており、私の経験からも、この計画で共有されることが効果的だと感じます。これは合理的配慮を見直す際や引き継ぐ際にも、非常に大切な書類となります。5つめは、合意形成した合理的配慮を、進級や進学、就職などの際に必要に応じて引き継ぐことです。障害のある子どもなどにとって、合理的配慮の提供は必要不可欠なものであり、進級や進学、就職に当たって、それが中断したり、提供されなくなったりすることは、学習や生活をするうえで、非常につらい状況になります。それを防ぐためにも、適切に引き継がれ、入学や転校、就職の当初から提供されることが求められます。ただ、環境が変わることによって、これまでと同じ合理的配慮を提供するのか、それとも変更する必要があるのかなどを検討する必要があることは言うまでもありません。その際、切れ目ない合理的配慮を提供するために、建設的対話により、新しい場所での合理的配慮が決定するまでは、以前の場所で提供されていた合理的配慮を提供することもひとつの方法です。6つめは、本人・保護者と学校の建設的対話による合意形成が常にうまくいくとは限らないということです。また、どのような合理的配慮が適切であるのか悩む場合もあるでしょう。その際には、さまざまな事例がネット上で公開されており(前出の表を参照)、それらを参考にしたり、自治体の専門家チームや学校外の専門家を活用したりすることが必要となります。これは、合意形成がうまくいかなかったあとに活用するということだけでなく、実態把握や内容の検討段階から活用することが大切です。●プロセスのポイント1 意思の表明●プロセスのポイント2 合意形成に向けた建設的対話の実施●プロセスのポイント3 PDCAサイクルを適切に回す●プロセスのポイント4 合理的配慮の内容を書いて残す●プロセスのポイント5・6 合意形成した合理的配慮を必要に応じて引き継ぐ48
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