スヌーズレンとは、1970年代半ばにオランダの重度知的障害者の施設であるハルテンベルグセンターで、ヤン・フルヘッセ氏(Jan Hulsegge)とアド・フェアフール氏(Ad Verheul)が中心となって実践したレクリエーション活動が始まりとされています。その背景には、当時の重度知的障害者は、看護師から医療的ケアを受けるのみで、全く刺激も楽しみもなく1日中ベッドで過ごす生活だったことがあります。こうした状況を改善すべく、ヤンとアドの2人は「アクティビティテント」と称して農業小屋を仕切り、各コーナーに感覚を刺激するアイテムを置いて、好きなコーナーで遊ぶレクリエーション活動を行っい、これがスヌーズレンの始まりと言われています。このレクリエーションでは、保護者と共に活動することでコミュニケーションを深めることが重要視されていました。その後、スヌーズレンの活動は世界中に広がり、米国やオーストラリアなどの英語圏では、Multi Sensory Environment (MSE:多重感覚環境)と名付けられました。スヌーズレンについては、様々な議論がなされてきましたが、ドイツのクリスタ・マーティンス博士が提唱した「特別にデザインされた環境の中で多重感覚の刺激を通して幸福感を得る空間」が、スヌーズレンを表していると考えられています。ここで特別にデザインされた環境とは、非日常的な「特別感」を感じる環境を構築する必要があり、その際に必要なスヌーズレン器材は、日本国内で流通している海外製品としてオランダのBarry Emons社とイギリスのROMPA社の2社が挙げられます。しかしながら、一時期のスヌーズレンブームに見られたように、潤沢な予算で器材をフルセット購入していた頃とは違い、現在の特別支援学校の予算事情からすると、より簡単に扱えるスヌーズレン器材のニーズが高まっている傾向にあります。また、多くの特別支援学校が抱える問題として、生徒数増加による教室不足からスヌーズレンルーム専用の部屋を確保できない現状もあり、その際のスヌーズレン器材としては、どこでもスヌーズレンを展開できる手軽で、且つ移動できるものに要望があります。ISNA日本スヌーズレン総合研究所会長 ISNA-Suisse にてスヌーズレン国際資格を取得(Formateur Snoezelen)ISNA-mse世界のスヌーズレン教育者に認定導入事例紹介 1 埼玉県立騎西特別支援学校2022年、騎西特別支援学校の樺澤徹先生よりスヌーズレンルーム設置に関わる支援の依頼を受けました。樺澤先生は大学院時代にスヌーズレンと出会い、その魅力と可能性を信じ、積極的にスヌーズレンを授業に取り入れています。また、2023年8月に開講したスヌーズレン資格認定講座の第1期生であり、その後創設された「スヌーズレン専門支援士の会」の会長にも就任していただきました。スヌーズレンを教育の現場に取り入れることは、スヌーズレンの正しい理解と教育に対する情熱によって左右されます。騎西特別支援学校では樺澤先生が中心となり、日本教育新聞が主催する学校応援プロジェクトに採択され、クラウドファンディングによってスヌーズレン機材購入資金の獲得に成功しています。スヌーズレン専門支援士の資格を取得することは、語る口に自信と説得力が生まれ、スヌーズレンを整備する際の力となります。嶺 也守寛 教授東洋大学福祉社会デザイン学部 ・人間環境デザイン学科 教授・博士(人間科学)特集ゼロからわかるゼロからわかる2スヌーズレンスヌーズレン44スヌーズレンとは入門入門
元のページ ../index.html#46